吉永 恵 さん

吉永 恵 さん

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早稲田大学政経学部と北京大学国際関係学院のWディグリー。2015年秋よりスタンフォード大学大学院。「大学生OF THE YEAR 2012」グランプリ

■ 吉永恵さんのこれまでの主な活動

○ 海外留学/進学
・北京大学国際関係学院(Wディグリー) 2012/9-2013/7
・ケンブリッジ大学サマースクール 2013/8-2013/9
※日本語・英語・中国語・フランス語・ラテン語の5か国語を話す
・スタンフォード大学、大学院進学 2015/9~

○ アワード受賞
「大学生OF THE YEAR 2012」グランプリ(2012/12/3)

○ 主な活動一覧
~ 幼少期(中国にて) ~
・教育テレビ番組の司会者 ・女優(子役)・全国演劇コンテスト3年連続チャンピオン
~ 高校生 ~
・竹中平蔵×高校生に参加 ・APU大学「cross-cultural program」最優秀賞獲得
・Audubon programで環境問題を一年研究(by ロックフェラー財団)…
~ 大学生 ~
・ビジネスコンテスト(JTB)最優秀賞受賞
・ITビジネスコンテスト・グランプリ優勝(NEC主催)
・史上最年少で内閣府の日本青年国際交流機構(IYEO)に入会しドミニカ共和国へ派遣
・史上最年少でG20 Youth Summitsに日本代表として出席
・アラビア半島一周・北米横断
・中東ファッションショー「The Secret of Arabian Mode」主宰(2012/7/15)
 ガジェット通信「中東美人がヴェールを脱いだら? 女子大生が企画する中東ファッションショー」
 ※毎日新聞7月2日朝刊など、多数のメディアで紹介
・APEC voice of future 2013 ユースプログラムに参加。世界の首脳が見守る中で2度発言する。
・ラスベガスインターンシップ 2013/11/6-11
・文部科学省トビタテ留学JAPAN!日本代表プログラム第1期奨学金生として、インドネシアとインドで半年間のインターンシップとボランティアを経験 2015/1-8
 ※2万字のインド放浪記をこれから数回に分けて日経新聞上で掲載される予定

■ 吉永恵さんインタビュー

【1】この秋からスタンフォードの大学院に進学し、東アジアについて学ぶ

ちょうどこのインタビューが掲載される頃、私はアメリカ合衆国での生活をスタートさせます。早稲田大学政経学部、北京大学国際関係学院に続いて、新たな学びの場に選んだのは、スタンフォードの大学院です。

大学院に進学を決めたこと、スタンフォードを選んだこと、それぞれにいくつもの理由がありますが、「将来、日中の懸け橋になるような学校を作るため」という私の人生をかけた目標が、その全ての前提になっています。

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当初は、就職を考えた時期もあったのですが、実際に活動をしてみると何か違う。民間企業も国家機関もNPOなどの組織も、それぞれに魅力はあるのですが、自分のいる場所ではない気がする。それは「学校を作る」という私の目標に、近づいていくイメージがしなかったからです。

学校を作るためには、教育者として、経営者としての見識が両方必要なはず。だったら無理に、1つの組織に従事して、その価値観に合わせた生き方をするよりは、もう少し客観的に自分や社会を見つめ直し、知識を究める時期を持ったほうが良いと考えたのです。

また、これまで「APEC」や「G20」などの活動に参加させていただいて、アメリカに集まるトップレベルの学生が本当に魅力的で優秀なことを感じていました。専門性も広範な知識も兼ね備え、ディベート力、リーダーシップ力、プロジェクトの遂行力などいずれも抜群。「非常に高いレベルで何でもできる」学生が揃っているのです。残念ながら日本にはこれだけの学生は滅多にいない。であれば、「今のうちにしっかりとアメリカで揉まれておくべき」そう感じました。

スタンフォードに決めたのは、アイビーリーグの中でも東アジア研究が進んでいる大学であることです。私は今まで、早稲田大学と北京大学で、日本から中国、中国から日本、双方の視点を得てきましたが、さらに視野を変え、アメリカから日中を見ることも重要になってくると考えました。特に今後のグローバル社会において、日中米の関係は非常に重要なものになると思っており、その三つの場所から世界を知ることは、将来にとって大きな財産になるものと期待しているのです。

【2】「APEC」「G20」と世界規模のユース会議に参加して

これまでの学生生活の中でも、いまに繋がる大きな刺激になった「APEC」や「G20」などの世界規模のユース会議参加について少し振り返ります。

APEC(Asia- Pacific Economic Cooperation アジア太平洋経済協力)は、アジア太平洋地域の21の国と地域が参加する経済協力の枠組みで、2013年10月上旬のインドネシアのバリ島開催に私は参加しています。

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この場は本来、各国首脳や財界トップの方が集まる場なのですが、その中に「APEC voices of the future」というユースプログラムがあり、各国から学生など若い世代の参加枠があるのです。外務省がこの公募をしているのを教えてもらいすぐに応募し、光栄なことに代表として選んでいただけました。日本からは私を含めて2名が参加しました。

このようなユースの国際会議の場は、以前にも経験があり、それが「G20 Youth Summits」(※G20(ジートウェンティ)=”Group of Twenty”の略で、主要国首脳会議 (G8) に参加する8か国、欧州連合 (EU) 、新興経済国11か国の計20か国・地域からなるグループ)でした。実はこの会の参加資格はマスター(修士)以上となっていて、年齢にすると22 歳以上が必須。しかし私は「それでも行きたい」と強くアピールしたら、まだ19歳の学部生にもかかわらず合格できてしまったのです。もちろん史上最年少(笑)。何事も「当たって砕けろ」は大事だと思った機会でした。

とはいえ、実際の会合では何もできなかったというところが本当のところです。25か国からユースメンバーが集まり、食糧問題や人権問題などテーマ毎に分科会 を行い、そこでの意見をドラフトにまとめていくのですが、まだ経験も足りないですし圧倒的に年下。言いたいことも上手く言えないまま終わってしまいました。ですから、次のAPECの会合では進んで発言できるようになろうと、意気込んでいたのです。

そのAPECではユースの集まりだけでなく、各国の大統領などの首脳が集まる場にも出ることができ、発言も可能でした。私は安倍首相のスピーチのときと経団連の米倉会長の時と、2度発言機会を求めて挙手をしたのですが、何と二度とも指名されたんです(笑) 

ちょうど東京でオリンピックが開催されることが決まった後ですし、各国に対するその宣伝も兼ねて、首相にはオリンピック開催に向けての施策や、その中で若者に期待することなどについてお聞きしました。また米倉会長にはアベノミクスに対する評価をお聞きした・・・つもりですが、正直、世界の首脳や多数のメディアに注目される中での発言にはかなり緊張して、お二方にどういう質問をしたかは正確に覚えていません (苦笑)

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でも発言する機会をいただけたのはとてもありがたかったですし、日本人の存在をアピールできたのではないかと思っています。
それはこの1週間の滞在で、国際社会における日本国の地位の低さを痛感し、そして存在感の薄さに残念な思いをすることが多かったからです。参加国の人たちが集まり談笑している中には、いつも日本人の姿はなくて、「本当に参加してるの?」と思うくらい、会場の中で探しても見つからない。会議で発言した日本人も私だけ。なぜかいつも目立たないところで静かにしているんです。

世界に誇る経済大国、技術大国であり、ODAなど世界への貢献規模でも世界トップクラスの国なのに、こういう国際的な場では全然注目されていないのは、本当にもったいないと思います。日本社会では出る釘がすぐに打たれますが、グローバルな国際社会においでは、むしろ出る釘にならないといけないはず。ですから、まだ社会のこともよく知らない経験もない私でも、あえてここは目立つ存在になろうと考えたのです。

そのおかげもあって、安倍首相にも米倉会長にも「吉永恵」という名前を憶えていただきました。米倉さんには「頑張ってください」と、そして首相には、 「2020年のオリンピックの時に、ぜひ恵さんに活躍してもらいたい」と声をかけていただき、本当に嬉しい思い出となりました。

【3】日中双方の国や人の気持ちが分かることを強みにしたい

APECに参加してもう一つ大きな収穫だったのは、自分の立ち位置を再確認できたことです。これまでの話でたびたび「日本人として」と言ってきましたが、実は私は中国の生まれです。

両親とも中国人で私も中学生まで中国で育ちました。その後母親の仕事の関係で日本に来て、そのままずっとこちらで過ごし、今は日本人として帰化していますが、そういった生い立ちに少し負い目がありました。「私は日本人代表として発言していいのか」と。

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しかし今回の参加チームを見ていると、そんな心配は杞憂でした。例えばある国のチームはみな、インド、中国、韓国、北欧、カナダなどどこか他国の血が入った人ばかり。肌の色も全く違っていたりする。でもそれで堂々と国の代表を名乗っている。

そうなんです。グローバルな社会においては、そういった混血の度合いなんて全く関係ない。「国籍を持っていればその国の人」、それだけのことだけでしかない。そう思うと肩の力が抜けて、すごくホッとし、自信が湧いてきたのです。そして、そういった二つ以上の国の立場や人の気持ちが分かるのが、自分の個性だとも。

そういえば、北京大学に通っていた時、中国版FacebookのようなSNSで日中間の関係について、想いを書き綴ったことがありました。その中の大人気だった文章のタイトルは、”日本小萝莉在北大生活有感”。主に日中間の文化の流入と逆流入の面白い現象についた語った随筆風な文章でした。この投稿には7万回もアクセスがあり、3000ものシェアがありました。その後も、日本の生活の紹介や日本から見た中国や、お互いの関係のあり方や、そういった内容を何回かに分けて書いていくと、ものすごく反響が増えていったんです。その多くは共感でした。特に知識層の方ほど、その傾向は高かった。

それまで、日本と中国のどちらの立場も理解できる中で、自分はかなり辛い思いをしていました。でもよく考えていくと「世の中の殆どの人はどちらかの立場しかわからない」「だったら両方を知っていることは大きな武器なのではないか」と、少しずつそう思えるようになりました。その立場を活かして両国の関係をよくしていくのが私の役目なのではないかと。

人がある国をイメージするとき、「その国の人で知っている人がいたら、その人の印象が国の印象に直結する」ということに気づいたことがあります。例えば私 のことをよく知っている人は、中国の方もみな日本人に対して好意的です。「私はメグのことが好きだから、日本のことも好き」という具合に。

これこそが冒頭に話した「学校を作りたい」の原点になる部分です。

結局、対中国でも対日本でも、問題の根幹にあるのは、ステレオタイプが浸透してしまっていること。国籍や人種で人を判断しない「フリーな心」を育んでいくことで、国を超えた1対1の人の繋がりが増え、それが国と国の関係に広がっていく。そして「永久な平和は友情がその基点となり、そのアクターは若者であるはずだ」と。

日本語と中国語の両方のカリキュラムがあって、場所も東京と北京双方にキャンパスがあって・・・。こんな構想を以前、北京大学の学部長に提案に行ったこともありましたが、今は揺るぎない目標として、学校建設を私の第一のライフワークに掲げています。早ければ10年後、遅くても15年後までくらいには実現したい目標です。

【4】旅行での気づきをきっかけに中東のファッションショーに挑戦

大学生活を振り返ると、もう一つ大きな私なりのチャレンジがあります。それが2012年7月に開催した、中東文化を日本に広めることを目的としたファッションショーです。

吉永恵ショー

「The Secret of Arabian Mode」と銘打ったこの企画は、本格的なファッションショーとともに、中東文化を語り合うトークセッションを行い、会場内では「ヘナ・ペインティング」 を実際に体験できるスペース、アバヤと呼ばれるアラブの民族衣装に着替えることができるスペースを設置。また食のブースでは、デーツやバスブーサといった、アラブのお菓子などを食べることもできるようにするなど、日本人のこれまでの生活の中でちょっと縁遠かった、中東の文化を身近に触れてもらう場所を積極的に作っていきました。

開催の経緯は本当にひょんなこと。大学1年の終わりに、二か月ほど中東を旅してイスラム世界の素晴らしさに感動したことに始まります。特に私が素敵に感じ たのが、ベールの下に隠された、女性の美しさ。皆とても美人なのに、素顔は大切な人にしか見せない。文化や風土から根付いている奥ゆかしさに、心惹かれるものがありました。

アラブに対して、多くの日本人はネガティブなイメージを持ちがちですが、実際には石油などの資源を中心に日本にはなくてはならない存在です。東北大震災の時でも、クウェートから500万バレルの原油を無償でいただいたり、非常にお世話になっています。なのにあまりにも情報が行き届いていない。

ファッションショーメインa

そこでファッションショーでは、文化を広めると共に、日本人の中東とムスリムにたいするネガティブなステレオタイプを払い飛ばすことを念頭に置いていました。人は知らず知らずのうちに固定観念で生きていることが多く、この固定観念の枠から脱出しないと真なる国境なき友情はできないと思っていましたから、アラブの多様性や魅力を通じて、多くの日本人がもっている先入観を壊すこと、若い人にも身近に感じてもらうことを強く意識していました。特にこの時は「衣食住」の「衣」から伝えることを意識し、イベント自体も衣食住からプログラムの構成を考案しました。

中東ファッションショーブースa

とはいえ、旅行中のふとした思い付き。企画書を書き始めたのは4月1日でもあり「エイプリルフール?」みたいな周りの反応でした(笑)。ファッション ショーの開催は7月15日ですから、準備期間は僅かに100日。周りにはファッションショーどころか、大型イベントを経験した人もいない。誰かに監修して もらっているわけでもない。資金のあてがあるわけでもなく、まさに無い無いづくしの立ち上げだったんです。

ただもう「やるしかない」って感じでしたね。「自分たちがやろうとしていることは、絶対的に価値があることだ」と信じて。もちろん、行く手は壁だらけでした。実績もない学生の企画に協賛してくれる企業を見つけるのは至難の業だし、会場を借りることすらままならない。

しかしこれまで出会った人の縁を借りて、粘り強く交渉を続けていくと、少しずつ展望が見えてきたんです。まずアラブ諸国の大使館から協力をいただけるよう になり、各国の衣裳も入手可能になりました。資金的にも入試の時にお世話になった早稲田塾、そしてビジコンで優勝した時に「何かあればまた後押しするよ」 と言っていただいたJTB法人東京(現JTBコーポレートセールス)さんなどからご協力がいただけたり。さらにそこから好意の輪がどんどん膨らんでいきま した。

会場も三井ホールというとても素敵な場所を借りることができました。ありがたいことにチケットも早くから売り切れ、当日は500席の会場がいっぱいで立ち 見も出るほど。まだ20歳になるかならないかといった私たちの無謀な挑戦が、これほどまでに華やかな形で開花するとは、本当に感動の経験でした。

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このような想いの具現は、まさに多くの方のご協力があるからこそできることであり、さらに人の縁の大切さをあらためて感じさせていただきました。私自身日 頃から全てのメールの末尾には「感謝をこめて」という一文を添え、その気持ちを伝える努力をしています。そんな日々一つひとつの出会いを大切に、地道に関係を築いてきた、そういった積み重ねの大事さが立証された機会でもあった気がします。
一方で、想いばかり先行し行き詰ることの多かった代表の私を支え、一 緒にがむしゃらになって進んできてくれた仲間のありがたみもあらためてしみじみと感じます。そして「よく実現できたなあ」って、「あれは幻だったんじゃないか」そんなこともふと思ったりもします(笑)

【5】「家族」「健康」「国境なき絆」が私の永遠のテーマ

春に大学を卒業して、大学院進学までの数カ月、あらためて日本の魅力に触れる機会を意識的に増やしました。着付けやお花や茶道など、日本古来の文化を集中的に学ぼうと考えたのです。アメリカに行って、しっかり日本を語れるように。

私が感じる和文化の魅力の一つに「間」があります。ふとした瞬間の相手に対する気くばりが自然と共有されており、「言葉のないコミュニケーション」とでも言えるものでしょうか。こういう感覚は、日頃のさまざまな人間関係はもちろん、国家の関係でも大事になってくるはず、そう感じます。

また一方で、海外へもたびたび訪問しました。例えばインドでは、孤児院へのダンスのボランティアをしてきました。振り付けは私のオリジナル(笑)。忘れてしまわないように毎晩前日に音楽を聴いて振りを考え、翌日教える。そして翌日また新たな音楽を聴き、また違うふりを考える、なんてことを繰り返していました。こうやって、子供たちと過ごす時間はとても楽しくて、今年の春に2か月、そしてつい先日まで1か月ほど、インドに滞在していました。

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これまで、私のアクティブな面ばかりを紹介してきましたが、必ずしもいつも走っていられる時期ばかりでもありませんでした。私も人並みに(笑)、恋愛に傷ついたり、人生が見えなくなってしまっていた時期があったりします。これは女性なら誰でも同じと思うのですが、「1人の女性としての幸せ」と「自分の人生の目標」の両立について悩んだり苦しんだり・・・

でもこの時の悩みも「国と国の関係」が影響している点もあったりして、結果的に、当初立てた「日中の懸け橋になるような学校を作る」という目標への意を深める契機にもなった気がします。でも、何か一つのために他を犠牲にするのではなく、もっと貪欲にすべてを楽しめるように、「家族」「健康」「国境なき絆」この3つを、あらためて自分のミッションとして言語化したところです。

最後に。私は今までさまざまな方に素敵な言葉をたくさんいただき、それらを心にいつも秘めて過ごしてきました。そんなフレーズの中から、座右の銘にしているものそして最近特に大事にしている二つを、ここでご紹介したいと思います。

○「送人薔薇手留香」(人にバラを送ると、その素敵な香りは自分の手に残る)=人に良いことをすると、それは自分自身にとっても素敵な価値を生む
○「三人行 必有我師也」(三人で歩くと必ずそこには自分の師となる人がいる)=どんな人からも学ぶことがあるし、大切にしなければいけない 


メディアでの紹介リンク

・GlobalManager /国境を超える若き挑戦者「日本と中国、そして中東をつなぐ国際感覚でファッションショーを見事成功させる」
・早稲田塾/ユメビト「早大・北京大でWディグリーを取得。世界と日本の架け橋に」
・早稲田ウィークリー/「将来は学校をつくりたい!」 G20やAPECでも活躍した努力家
・Piece/「好きな事×やりたい事=アラビア女性のファッションショー」