八村 美璃 さん

八村 美璃 さん

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中央大学法学部。ヨコスカネイビーパーカープロジェクト 「y.s.plus」リーダー。「ヨコスカ未来100人会議」発起人、「G1 COLLEGE 2016」運営チーム

■ 八村美璃さんのこれまでの主な活動 
 
○ヨコスカネイビーパーカープロジェクト 「y.s.plus」リーダー
※「横須賀学生政策コンペ」(学生団体「スカペンコ」主催)優勝を起点にスタート
・ホームページ http://yokosukanavyparka.com/
ヨコスカネイビーパーカー 30秒CM(youtube)

★地域商店街連動企画
「パーカーを着て、ヨコスカを食い尽くせ!」(2015/12/19-20)
 ※購入したヨコスカネイビーパーカーを着て対象の飲食店に行くと割引サービスを受けられる企画
・「YokosukaNavyParkaParty2016」開催 (2016/3/12)

★テレビ出演 フジテレビ「ミスターサンデー」 (2015/3/8)
「ヨコスカネイビーパーカー 横須賀 人口減少日本一の女子高生を愛した女子高生たち」 

○その他学外活動
・「ヨコスカ未来100人会議」発起人。2016/3/19、7/10にイベント開催
「G1 COLLEGE 2016」運営チームメンバー

■ 八村美璃さんインタビュー 
                            
【1】ダジャレからヒントを得てスタートした「ヨコスカネイビーパーカー」

きっかけは、先生が見せてくれた一枚のチラシでした。そこに書かれていたのは「横須賀学生政策コンペ」という文字。横須賀の高校生・大学生が、地元横須賀の課題について政策提案を手掛けるという企画の案内でした。

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当時はちょうど、大学の推薦入試が終わった頃で、残りの高校生活をどう過ごそうか考えていたタイミング。生まれ育った横須賀のために何かをしたいという気持ちは以前からあったため、「これは面白そうだ!」と、すぐに仲間を募りました。

集まってくれたのは、やはり推薦入試などが終わり、時間に余力があった同級生の女の子6名でした。それぞれが、これまでの高校生活で、実行委員とか部長などリーダーシップ経験を持った、個性派で実力のある子たちばかり。ですから、「何をするか」より先に「この仲間と一緒に行動できること」の方が、私の中で大きなモチベーションになっていた気がします。

最初に私たちが考えたのは、「堅いことは役所の方々に任せればいい」「私たちは私たちらしく、等身大で柔らかいものを」ということでした。そのコンセプト通りというべきか、企画の端緒となったのは、何気なくふと浮かんだ”ダジャレ”です(笑)

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ところで、みなさんは「よこすか海軍カレー」や「ヨコスカネイビーバーガー」という名前をご存知ですか?

実はこれらは、横須賀のご当地グルメなんです。せっかくだから、地域のものにヒントがないかと、「ヨコスカネイビーバーガー」を、繰り返しブツブツつぶやいていた時、「ネイビーバーガー」「バーガー」・・・・・・。「ん?パーカー?」そんな感じで、ふと頭に浮かんだのが、「ネイビーパーカー」というフレーズだったんです。

【2】町おこしの主役は、その土地の住民であってほしい

アイデアが浮かんだあと、あらためて私たちは横須賀の街のことを調べてみました。すると、さまざまな問題点が浮かび上がってきましたが、その最たるものが、人口の減少でした。

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横須賀市の人口は、1992年をピークに減少の一途をたどっていて、全国の自治体の中でも(社会減ベースで)、日本一人口減少が激しい地区だったんです。首都圏である神奈川の主要都市にもかかわらず・・・

しかし私たちが、人口減少対策を声高に語ったところで、できることには限りがあります。それに、先ほどもお話ししたように、その切り口では決して高校生らしいプランにはならないでしょう。

でも違う視点からでも、同じ目的を持たせることはできるかもしれないと考えました。例えばそれは、「横須賀の街を好きな気持ちをみんなで再確認すること」「その気持ちを心の中にずっと留めてもらうこと」など・・・。一度横須賀を出ていったとしても、またいつか”この街に戻りたい”と言ってもらえるようにすることです。

横須賀には、誇るべき文化や歴史、見るべきスポットなどさまざまな魅力があります。私は生まれてすぐ川崎に転居して、客観的に街を見ることができたこともあって、そのことをより強く感じます。

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例えば、日本人と外国人が混在し、日常の暮らしの中でコミュニケーションが取れており、非常に多様性に富んでいること。そのおかげで街全体に独自の文化が作りだされていること。

その象徴ともいえるスカジャン、刺繍技術も素晴らしいですしとてもカッコいいですよね。またどぶ板通りなど個性的な店が揃う魅力的なエリアがあったり、「絵になりやすい」街ではないでしょうか。ですから、人口減少をしているとはいえ、横須賀の街には多くの観光客が訪れています。

ただ私たちが気になったのは、街の魅力のアピールが「よそに向いてばかり」に感じられたことです。「市民が置いてけぼり」にされているのではないかと。少し辛らつな意見ですが、ご当地グルメも殆どの地元民は食べたことがありません。あくまでも町おこしの主役は市民であってほしい。それを強く発信したいと考えたのです。

【3】パーカーに期待したのは、メディアとしての機能

ダジャレから生まれた「ヨコスカネイビーパーカー」ですが、私たちは”ファッション”という基本的な機能以外に、狙っているものがありました。それが「メディア」としての役割です。

パーカーは、1点だけであれば、あくまで1人のファッションの1形態です。しかしそれが数集まると、個人の自己表現の集積になります。メッセージとして意味を持ってくるのです。それがメディアとしての機能です。

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市民それぞれが横須賀の街に強い愛着を持っているということ、そしてそういう人が実はすごくたくさんいること。それをオリジナルパーカーを通して社会に発信していく。「着ることで横須賀愛を表現し、着ることで一人ひとりが町おこしの主役になる」そんなことが可能ではないかと、「肌に触れる横須賀の新しいメディア」をブランドコンセプトに掲げました。

ただ実は、初めのうちはアイデアだけのつもりでした。「あくまでもコンテストのため」というくらいに・・・

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しかし話を進めていくうちに盛り上がってきて、これは一度作ってみるべきだと。右往左往試行錯誤を重ねながら、28種類もの試作品を作ったのです。そしてみんなでそれを着てプレゼンに臨み、ありがたいことに優勝することができました。

優勝した記事が新聞に載ると、実際に買いたいというお話をいくつもいただくようになりました。私たちもそれが嬉しくて調子に乗って「じゃあ販売用の商品も作ってみようか」と、一気に150枚制作したのです。その時みんなで抱えた借金は40万円。いま考えると「なんて無謀なことをしたんだろう」と自分たちでも呆れるのですが (苦笑)

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そんな感じで楽観的に始まったパーカー販売でしたが、ここで致命的な問題にぶち当たります。実は「NAVY」の商標は、ある大手アパレルメーカーが保有していて、商用に使うことができなかったのです。さすがにその時はみんな落ち込みました。とても言葉にできないほどに。「売るに売れない。でも借金はいっぱい。どうすればいいんだろう」、そんな苦悩の日々がここから始まります。

【4】150着完売! しかし描いていた企画は実現できず、高校卒業で取り組みは終了

でも自分たちばかりで悩んでいてもらちが明かないと、勇気を出して商標の持ち主に電話してみることにしたんです。私たちのこれまでの取組みの内容と、「是非販売したい」という気持ちを強く載せて。

すると、ありがたいことにその熱意は伝わり、何とか許可をいただけました。「高校生が地域のためを思って始めたこと」という内容への共感と、商業的な拡大を目指しているものではないという点への理解もあり、「権利に関しては無償で販売しても構わない」ということになりました。

その回答を聞いた瞬間、ホッとしすぎて、みんなで大泣きしました(笑)

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パーカーは、ヨコスカネイビー(紺)、シーガルホワイト(白)、ペリーブラック(黒)など合わせて5色、3サイズ。デザインは正面に「NAVY」のロゴ、カモメ・錨・三浦半島、そして市制記念である明治40年(M-40)など、横須賀をイメージしたプリントを施しました。価格は1枚2,980円の設定です。

でも実は1枚2,980円だと、全部売れて44万7000円なんですよね。制作費は計40万円。活動経費を足したら・・・? 明らかに値付けが間違っていますよね(笑)。でも130枚が予約で売れて、残り20枚も当日の手売りで見事に完売。借金をどうしようか苦しんでいた時のことを考えると、私たちとしては十分すぎるほど嬉しい結果になりました。

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しかし、これだけ盛り上がった企画でしたが、この時点で「次」はありませんでした。

私たち自身、そもそもパーカーを売ることが目的ではありません。あくまでメディアとして、買っていただいた人と「その次」を仕掛けることが、真にやりたいことでした。

でも残念なが自治体からの協力を得ることはできず、構想していた地域との商店街連合企画は実現しませんでした。商標の問題もありましたし、仲間もみな違う大学に散り散りになっていく。「続けるのは難しいよね」と、私たちの卒業とともに、「ヨコスカネイビーパーカー」の舞台の幕は閉じました。

【5】頑張りを応援してくれる、たくさんの大人の存在を知ることができた

大学生活が始まると、それぞれが新しい環境の中で生活をはじめ、会うことも話す機会も減りました。もともとプレゼン大会のために即席で生まれたチームで、継続的な団体にしているわけでもない。「寂しくはあるけど、みんなそれぞれの道を進み始めたのだし、これでいいんだろうな」そう考えたりしていました。

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とはいえ、消化不良な部分があったことは事実です。特に、「そんなに若い子たちばかりで、オリジナルパーカーを販売するなんてすごいね」などとお褒めいただくたび、「私たちはパーカーを作ることが目的で始めたんじゃないのに!」といったモヤモヤが、ずっと溜まっていくことになりました。

でも、そんなことで葛藤しているくらいなら、動いちゃったほうが良いですよね。そこでもう一度初心に立ち返るべく、「パーカーをメディアにすること=パーカーを使って地域の方々と町を盛り上げる」企画を進めようと決めました。これが、私たちが横須賀愛を表す最後のチャンスなのではないかと。

そして、秋の再販に向けて活動を再開することにしたのです。

ただ、商標の問題はまだ残っていました。そこでゼロから新しいデザインも試みてみたのですが、どうしてもイメージに合うものにならず・・・。あらためて先方と交渉し、「次が最後」ということで、もう一度権利を無償貸与していただくことになりました。

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その後少し時間はかかってしまいましたが、12月19~20日にかけて再販にこぎつけました。この時は事前からかなりの人気となり、予約だけで300着が売れたんです。でも、本来伝えたかった同世代に届く前に、すでに無くなってしまったこともあって、2月に受注販売のカタチで再度発売しました。結果的に、キャンセル分の即売会も含めて、およそ1000着をすべて売り切ることができました。

そして今回は、売るだけに終わらず、目標にしていた町ぐるみでのイベントも実施できました。

例えば、販売期間に同時並行して開催した「パーカーを着て、ヨコスカを食い尽くせ!」。これは、購入したヨコスカネイビーパーカーを着て対象の飲食店に行くと割引が受けられるものです。

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また翌年2月13日~29日には「チーム対抗でヨコスカを駆けめぐれ!」も開催しました。パーカー購入時に1着につき1枚、パーカーと同色のカード(投票券)を手渡し、提携したお店を回り、より多くのミッションを達成したカラーチームに賞品をプレゼントするといった企画です。この時は、横須賀グルメを提供する飲食店、軍港めぐりや猿島航路、ワッペン店、洋品店など20店舗に協力いただきました。

また3月12日には、ネイビーパーカーを着て集まる交流会「パーカーParty」を開催しました。これは、「チーム対抗でヨコスカを駆けめぐれ!」の企画の総括的な意味合いで、優勝チームへの賞品贈呈などを行いました。

これらのイベントを通じて得られたことは、私たちの意欲に応えていただける、サポーター的な大人の方にたくさん出会えたこと。それはすなわち、頑張れば応援してくれる人がたくさんいるっていうことを知ったことでもあります。今でも街を歩くと、いろんな方にお声をおかけいただけます。「頑張って良かったな」そんな気持ちになることができ、とてもありがたいことだと思っています。

たぶん、まだまだできた事はたくさんあったかもしれませんが、何とか当初の目的を果たして、この3月をもって「ヨコスカネイビーパーカー」のすべてのプロジェクトを終了することになりました。

【6】キーワードは「ポテンシャル」。その原点は中高時代の部活動の経験

今回のプロジェクトを推進する中で、私にとってずっと考え方の軸になっていたのが「ポテンシャルを引き出す」という発想です。

横須賀だけでなく、社会にはたくさんの課題があります。解決しないといけない問題も無数にあるでしょう。でも「大変だ!何とかしないと」というネガティブから生まれる取り組みでは、なかなか人の心を動かせないのではないでしょうか。

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でも、横須賀の街にはいいところがたくさんある。何よりも横須賀の街を好きな人がたくさんいる。そういったポジティブな意識の中から、一つひとつの魅力や可能性を切りだしていく。「プラスの面を探しながら、それを最大化していくために創意工夫を凝らすこと」私はそういう考え方が好きなんです。そしてそのほうが良い効果が出やすいのではないのかなって。

そういった私の考え方の原点には、中学高校時代の演劇部の活動の経験があります。

入部した頃は、メンバーも殆どが抜けて廃部寸前でした。でも後輩8名引っ張ってきて、何とか再建にこぎつけ、そんな逆境の中からでしたが、やがて市の大会で優勝、県でも3位に入賞するまでになりました。

そのときに意識していたのが、個々のポテンシャルをどう引き出すかということでした。みなそれぞれに良いものは持っているけど、それを自覚していないか、上手に引き出せていないだけ。だったら、そこを変えていけばいい。私はけっこう、みんなをけしかけるのは上手だったので(笑)、この時の成功体験は今に生きています。

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そしてもう一つ、独自の音感というか・・・。自分なりのフィルターをもとに、感性に響くもの、感じる匂いみたいなものを拾っていく。そういう感覚も、この頃に培ってきたような気がします。

【7】今年の課題は、視野を広げること、人から学ぶこと

私は今、法学部に通っています。「ヨコスカネイビーパーカー」の活動とは全く違う方向のように見えますが、実は私なりの共通項があるんです。それもやはり「ポテンシャルを引き出す」がキーワードです。

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「社会を変える力があるもの」には、さまざまなものがあるかと思いますが、法律も一つの大きな要素ではないでしょうか。そして、人が生きる上の基本ラインでもあります。

守るべきルールが分かってこそ、成しうる自由が理解できる。それは、人の持つ可能性の範囲を見極めることでもあり、それがポテンシャルを引き出すベースになる。私はそのように法律を捉えています。

そして法律は、人の生活のあらゆる範囲を網羅する世界です。そう考えると、私の弱点かとも思えた「いろんなことに何でも興味を持って首を突っ込んでいくこと」も、大きな武器になりえるような気がするんです。

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最近では、「G1 COLLEGE」のメンバーをさせていただいています。昨年初めて参加して大きな刺激を受け、今年は最年少運営メンバーとして参加させていただくことになりました。今までは自分たち主導で、企画し実行することがメインでしたが、今年は、いろんな素敵な先輩から教えを受け、自分の視野を広げること、自分の及びもつかないような発想や実践を学ぶこと、そういうことにも力を入れたいと思っています。

もちろんその中で、自分の力を発揮できる場面があれば率先していきたい。そういえば、この夏には「バリチャレンジユニバーシティ」にも参加することになりました。これは「今治市・しまなみ海道から発信するインキュベーションプログラム」で、地域の活性化をテーマにしたものです。

今まで私は「ヨコスカネイビーパーカー」のことを聞かれるたびに、「地域活性をしたいわけではないよ」と答えていたのですが、なぜか気づいたら地域活性のプログラムに参加している(笑)。私にとっては、「ポテンシャルを引き出す」対象は、知らず知らずのうちに地域をテーマにしたものになっているのかもしれません。その時に、「ヨコスカネイビーパーカー」での経験が少しでも生かせるように、自分なりの形をしっかり作っていければと考えています。

■ メディアでの紹介リンク

・ASCII×ビジネス 真紅の女子大生がYOKOS会議で訴える「地方創生=自分創生」(2016/7/4)
・横須賀経済新聞 横須賀の女子大生提案「ネイビーパーカー」予約殺到、1,000着超に (2016/2/12)
・読売新聞「神奈川・横須賀の学生が考案…地域愛生まれるパーカー」(2016/1/12)
・横須賀経済新聞 「ヨコスカを着て何をする?」 話題のヨコスカネイビーパーカー、再販へ」(2015/12/10)
・横須賀市長ブログ 市長室に「横須賀ネイビーパーカー」来たる! (2015/3/12)
・Naverまとめ 横須賀の女子高生が提案した「ヨコスカネイビーパーカー」が話題に!(2015/3/9)
・DESSART CLUB「横須賀の高校生に勢い、市長も愛用?ヨコスカネイビーパーカーとは」(2015/3/5)

・My Columnist【道を拓くひと Vol.4】「ヨコスカネイビーパーカー」は通過点。八村美璃さんの終わりなき旅
・リクルート「キャリフル」 ポテンシャルを引き出す、 そんな役割を担う人になりたい
・SUUMO 「次にくる住みたい街はここだっ! ~横須賀編~」
・タウンニュース横須賀版「ネイビーパーカーの発案者でチーム「Y.S.+」(ワイエスプラス)のリーダー 八村 美璃さん」(2015/3/27)