前田 実咲 さん

前田 実咲 さん

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慶應義塾大学経済学部。アデオジャパン学生代表、「IMF世界銀行年次総会」「TICAD Ⅴ」共同代表として参画

■ 前田実咲さんのこれまでの主な活動

○ NGO活動
アデオジャパンに1年の9月から参加。2年次にソマリア難民キャンプ等での4ヵ月間のNGO研修。4年次に学生代表

○ 国際会議出席
・2012年10月 IMF世界銀行年次総会にDevelopment Japan共同代表として参画
・2013年08月 TICAD Ⅴ(アフリカ開発会議)にTICADⅤ学生プロジェクト共同代表として参画
・国連フォーラム幹事会所属

○ イベント登壇
「Next Leaders Meeting2012」学生登壇者 (2012/9/12)
・「第七回UNHCR難民映画祭」トークイベントにて、初の学生登壇者(2012/9/30)

○ ダンス/演劇
幼稚園の頃からチアリーダーや新体操を習い、中高6年間ミュージカル、大学に入ってからもしばらくはダンスを続ける。2013/11/17に中高の部活の同期と後輩との4年ぶりリバイバル公演「JG0405ESSリバイバル」開催

■ 前田実咲さんインタビュー

【1】国際開発をライフワークに学生生活を過ごす

私はこれまで4年弱の学生生活の中で、国際開発をテーマにした活動を一貫して続けてきましたが、その原点であり、いつもライフワークの中心にあったのが、アデオジャパンの存在です。

このアデオジャパンというのは、「アフリカ及び日本社会の相互理解、人々の行動促進」をテーマに掲げ、ケニアのナイロビに本部を置き活動している、アフリカ発のNGO「ADEO」の日本支部です。2003年にADEOでインターンをした日本人大学生2名が帰国後、バックアップオフィスとして立ち上げたもの。既に10年の歴史がある団体になります。

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現在の主な活動は大学生を中心とした現地への研修生派遣。その他アフリカに対する意識啓発活動などを日本国内で行っており、私はここでは1年生の9月頃から参加させていただいています。

このような国際開発の分野に興味を持ったのは、中学・高校の頃に遡るでしょうか。通っていたキリスト教の中高一貫校では毎日礼拝があり、NGOや国連で働いている方の話を聞く機会が多くありました。それで漠然と「大学生になったら関わってみたいな」という思いが芽生えるようになりました。

一方で「性と社会」に対する関心や疑問も、この頃から強くなっていました。同性愛、HIV(後天性免疫不全症候群)、早婚、女性器切除、尊厳殺人、紛争下の性暴力など、特に女性にとっては身につまされる凄惨な内容が非常に多い。そして途上国に多いテーマでもあり、これらが相俟って、国際開発に携わろうという意欲が強くなってきたんです。

しかし実は、私はそれまでNPO、NGOなどの社会貢献活動にピンと来ていませんでした。自分の生活を度外視して、滅私の心で社会のために頑張る。もちろんそういう姿勢も素敵なことなんですが、もっと自然体で自分の生活を大事にしながら、役に立てる方法もあるはずだと。どちらかというと私はそういう考え方をしていました。

【2】本質は「解決すること」ではなく人材育成の場所

アデオジャパンは、インターネットで検索していて知りました。初めは何となく顔を出しただけなんですが、話を聞いてみるととても面白そうだと。

もともとは大学生だけで始まった団体なのですが、卒業後も一緒に活動を続けているため、10代から30代までメンバーの年齢幅が広い。そして社会の第一線で活躍する人がたくさん集まっていて、みんなしっかり自分の生活は持ち、収入も安定しています。ビジネススキルも鍛えられている。一見「片手間」のように見えるかもしれませんが、その限られた時間をとても大事に使っている。実は意識もアクションもプロフェッショナルな集団だったんです。

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そもそもこのコミュニティは、「困っている人を助けたい」という想いで繋がっているというよりは、「国際社会に通用する人材を育てること」といった育成の場を重視しているのが特徴です。

「いま目の前の困っていることに対峙するためには、もっと広い視野を持つことが大事。自分たちが何ができるか考える力も重要。国際問題って何か、NPOやNGOは何ができるのか、どういう存在なのか、どんな限界を抱えているのか、そういうことを知ることが若い時期に必要なのではないか」。そんな場所を提供していこうという姿勢なんです。これは私が以前から持っていた感覚にすーっと入ってくるものでした。

初めて顔を出したミーティングでも、カラオケ店で突然代表がマイクを持って、アフリカやアデオに対する思いを丁寧に言葉を選びながら淡々と話すんです。それはこれまで10数年の年月の中で培われてきた、先輩たちの想いがじんと伝わるものでした。みんな凄く自然体で、自分たちの信念に忠実に生きている感じがしました。

入ったばかりの頃は、学生は私含めて2人だったこともあり、たくさんのことを教えられ育てていただきました。主催イベントの実施や、助成金の申請などの実務など「とにかく何でも一人でできるように」。ここで鍛えられたことはその後の活動に大きく役立っていますし、先輩のみなさんにはとても感謝しており「恩返し」という言葉は、私のこれからの人生の中の重要なキーワードになっています。

【3】「身の丈を知る」ことで大きな覚悟を持つことができた

アデオジャパンでの活動での最も大きな経験と言えるのは、ソマリア難民キャンプ等でのNGO研修を行ったことです。これは大学2年生のとき2011年の8月から12月の4か月間でした。

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メインの訪問先は、世界最大の難民キャンプと言われる「ダダーブ難民キャンプ」で、主にADEO本部のNGOのお手伝いをしていました。栄養調査のプロジェクト、「Sexual and gender-based violence(SGBV)」というレイプ被害や家庭内暴力を扱う分野のプロジェクトと、教育のプロジェクトなどに関わっていました。

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その後、援助機関スタッフの誘拐事件や爆弾事件などが多発し治安が急激に悪化したので、ナイロビオフィスに戻り、オフィスワークを1か月半程して、最後に2週間だけウガンダとの国境地帯にあるブシアのオフィスに出張しました。ここでは新しく水と衛生のプロジェクトの立ち上げを補佐する仕事に関わっていました。
(※具体的な内容詳細はこちらを参照)

このように現地で長く働いていると、さまざまなものが見えてきます。自分の無力さ、社会の歪みや矛盾。社会貢献活動と言ってもきれいごとばかりじゃないし、全てが称賛されるべきものでもない。目を背けたくなるようなこともいっぱいありました。そもそも自分たち外国人がそこに行く意味があるのかとか・・・

そこで感じたのが「身の丈を知る」ということです。世界にはさまざまな人がいて、言葉も文化も歴史も違う。必然的に価値観も多種多様。そこには乗り越えることができない大きな壁があったりします。一方で、そういう違いはどちらが優れている、劣っているということではなく、大きな個性であり特徴といえるのだと思います。

であれば私たちは「いろいろな地でいろいろな人が、それぞれに強い思いを持って必死に生きている」、そういった多様さをありのままに理解することから始めるべきなんだろうなと。そこに過剰な責務を感じる必要もないし、自分は凄いことをやっているんだという変なプライドも不要。肩ひじ張らずに「自分の身の丈」で頑張ることが大事なのではないかと思うんです。でもそれが自分自身への「大きな覚悟」を芽生えさせてくれるのではないかと。

【4】「IMF世界銀行年次総会」「TICAD Ⅴ」と国際会議にユースとして参画

最近、世界的にユースの活動に対しての注目が高まり、国際会議に併設されてユース大会が開催されることが多くなっています。一方で国際会議の場で、主催者側からサポートされつつもユースとして独自にイベントを開き、本来の政策提言が可能な場も増えてきています。私もそういう機会には積極的に参加させていただいてきました。

最初に始めたのは「Development Japan」です。これは2012年10月に日本で開催される「国際通貨基金・世界銀行年次総会(IMF世銀総会)」を機に発足した、ユースを中心とした団体です。

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ここでは社会人、博士、修士、学部3,4年生がほとんどの中、私は恐れ多くも共同代表というポジションに立たせていただきました。毎日泊まり込み状態でスタートアップのようなスピード感で、私たちが重視したものは「創造性」でした。芸大生などデザインを得意とするメンバーと協働し、「国際開発ってもっと面白く意義深いものとして社会に発信出来るのではないか」「様々な領域とのコラボレーションが必要なのではないか」ユースとしてそう訴えかけました。

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国際開発にどっぷり浸かっているわけではない人々との協働がほぼ初めてだった私には非常に難しいことばかりでした。しかし初めてなことが多ければ多いだけ、得られる視点や繋がりも多く、自分を見つめ直す良い機会ともなりました。

翌年の「TICAD Ⅴ(アフリカ開発会議)」は、また違った様相を持っていました。以前から関わってきたアフリカがテーマで、協働するのもアフリカや政策、開発の分野の人々。自分らしく、もっと本質的にアフリカや開発、ユースについて思考する必要性と時間が確保される場でした。ここでは、アフリカと日本のユース約100名と共にサミットを開催し、政策提言を行いました。最終的には外務省から発表される宣言文書の中で「ユースの機会拡大」の文言が入り、自分たちの影響力は測れないものの、非常に嬉しく思いました。

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このような活動をリーダーとして関わって感じてきたのは、こういった大型の企画は、これまでの積み重ねとか、社会環境とか、参加した多数の顔ぶれの関係とか、アクターが多すぎて、結果を生み出した要因が一つに絞りきれないということ。だから「何が正解か」を突き詰めていくことはとても難しく、下手すると自己肯定しがちになったり、0か10かの両極のスタンスになったりする恐れがある。それよりも大事なのは「目の前にあるものにじっくりと対峙し思考し実行していく。その積み重ねで、結果はついてくると信じること」だと。

もちろん状況に応じて、方向性を修正せざるを得ないときもあります。これだけの規模だと、例えば交通や宿泊の手配だけでも膨大ですし、「何でこんなことをやっているんだろう」など懐疑的になる場面も出てきます。そういう必然性を一つひとつ説明し、自分たちのやっていることに価値があることを絶えず確認していく。それをしっかり結果に結び付けていく。そして何よりも大事なのは、ユースとしての政策提言には、ユース自身の成長という大きな側面があること、すなわち「みんなにとって成長していく場であること」。その点はとことん突き詰めて進めてきました。

【5】「いまあるもの」の価値と可能性を掘り起こすのが自分向き

私のこれまでの活動は、既にある団体や取り組みに「後から」参加したものが多い気がします。さまざまな場所でアクティブに飛び回る私を見て「起業するの?」とか「自分で何か立ち上げたら」みたいな声をいただくことも多々あるのですが、現時点では自分自身はそういうタイプではないかなって思っています。

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その理由の一つとして考えているのが、「社会には既にさまざまな団体があり、活動がある」ということです。多くの場所で多くの人が、社会的使命感や高い志で新しい何かを次々に立ち上げています。提起するべき課題もテーマも、すでに何かしら近似した形で存在するものが多い。「そこでまた新たに立ち上げるのは粗造乱立を繰り返すだけのことでは?」そう思うのです。

実際、意気込んで立ち上げたものの、志半ばで行き詰ったり、顔ぶれが変わったりして最初の勢いがなくなったり、上手くいっていないものは少なくありません。しかしその中には、着眼もよく大きな可能性を秘めているものもあったりします。資金や人材やノウハウやそういったものを適宜補えば、本来の目的に到達するかもしれない。

そういう課題を洗い出し何をすべきか考え、あるべき道筋をつけていくような、私はそういう立場なのかなと思います。これまで協働する人々がパッションとカリスマ性をもってがんがん進めていく人が多かったからかもしれないけど「私はセカンドポジションとして適宜補正、筋道をたてて結果にまで到達させる、そういったことの方が向いてるのかも」って。

日本ではまだどうしても「立ち上げのストーリー」に注目が行きます。「ゼロから苦労して立ち上げた」ことに美学を感じ、ベンチャーの世界も社会起業の世界も、「起業することが凄い」で終わってしまいがちです。でも必要なのはそれだけではない。その意思を受け継ぐ人、こつこつ地道に頑張る人がいてこそ、最初のアクションに意義が生まれてくるはずです。私は、自分が創業タイプじゃないからこそ、そういった「いまあるものを大事に育てる」ことをお手伝いしたり関わりたいなって。

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しかし国際開発の業界は、その業界だけでまだまだ凝り固まっているとも言えます。ですから私は、これまで4年間どっぷり浸かり「共通言語」を持つ居心地のいいこの業界を一度離れ、世の中一般のお金の流れ・価値観を学ぶために就職の道を選びました。いずれまた国際開発の業界に戻るためにも、一歩引いたもっと広い視点から結果到達に至るまでの過程に関われる力を付けていきたいと考えています。

社会貢献にしろ、何かしら自分のやりたいことを実現するためには、お金とスキルは非常に重要です。「思いは大事、でも思いだけでは何も変わらない」そういう事実をたくさん目の当たりにしてきたからこそ、現実にドライに向き合い、トータルで解決できる力を付けていく必然性を感じているのです。

【6】「恩返し」したいと思う気持ちが成長の原動力に

>先日、「JG0405ESSリバイバル」というダンス公演を行いました。私は幼稚園の頃からチアリーダーや新体操を習っており、中高6年間はミュージカル、大学に入ってからもしばらくダンスを続けてきました。今回は、中高の部活の同期と後輩とのリバイバルなので、4年ぶりの公演です。

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中高の頃の私は人をよく怒鳴りつけて(苦笑)強硬に物事を進める人間でしたが、その後いろいろな経験をさせてもらって、今はもう少し違った形で人に接することを心掛けるようになりました。そんな自分が「昔の自分をもよく知る人達とまた何かもう一度」というのは、ちょっと不安でもあったのですが、だからこそできるものもたくさんあるはずで、それがすごく楽しみでした。

何より舞台に立つことは小さい時からずっと好きだったので、学生時代にもう一度思いっきり舞台の上で踊りたい歌いたいと思ったらその気持ちは抑えられませんでした。この準備のために4ヶ月ほどは、大学以外の時間はほぼ100%と言っていいくらい気持ちを注いできました。もしこの舞台に立つことを選んでいなかったら、残り少ない学生生活の時間を勉学や国際開発への活動や、また新しい経験に注ぐことが出来たことは十分承知です。それでもこの舞台に立つことを優先したかった。

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でもやはり舞台は本当に楽しくて、盛り上がって・・・。学生生活最後にまたこういった機会を持たせてもらえたのはとても嬉しかったですし、つくづく自分は周りの人たちに恵まれていると、あらためて感じました。

今まで私は本当に多くの方にお世話になり、さまざまなチャンスをいただいてきました。これまでさまざまな場面でインタビューを受けるたび、繰り返し「恩返し」という言葉を用いていますが、それほどにたくさんの感謝の日々を過ごしてきました。これからもその「恩返しする気持ち」を原動力に、自分自身を鼓舞し、より大きな成長ができるよう努力していきたいと思っています。

メディアでの紹介リンク

・朝日新聞デジタル「学生だから言える理想を」慶大生、アフリカ会議で提言(2013/6/1)
・TICAD V 学生プロジェクト「代表対談」
・CAREEER MESSE/内定者インタビュー「ユースとして国際会議への政策提言を実施、組織の代表として尽力」
・ReLife(リライフ)「原動力は恩返し」 
・学生団体アンサー(Answer)「原動力は人と恩返し。」 (2012/11/11)
・Wakamonoiz「アデオジャパン:前田実咲さん、村岡楓公さんインタビュー」
・Jukushin.com【CAMPUS IDOL】経済学部1年 前田 実咲さん (2011/2/16) 
・アフリカ日本協議会 「アフリカの現場から:ケニア ダダーブ難民キャンプ」 「アフリカNOW」No.95
・「世論時報9月号」紛争と飢餓の時代を超えて「共に歩む」支援が必要

~動画・ラジオなど~
・YouTube なんとかしなきゃ!プロジェクト/ニコ生企画 藤岡みなみの「I don’t know africa 発見アフリカ54の国」(2013/6/6) ※19:30頃から
・YOUSTREAM UNHCR シンポジウム「アフリカの難民問題-人道支援の一層の強化を目指して」(2013/4/29)
・NHK「ワールドWave」 News Café (2013/3)
・インターネットラジオ「つながり。【日本と世界のドタバタ取材記】」
 [第26回] 緊急援助と開発援助の違いとは? (2013/7/20)
 [第27回] 日本のNGOとアメリカのNGOの違いとは? (2013/7/30)
 [第28回] 難民キャンプでインターン生活! (2013/8/10)
・高校生新聞、塾生新聞

~主催者リリースなど~
・JICAリリース TICADV 学生プロジェクト「アフリカと日本の将来に向けた若者の可能性」(2013/6/3)
・FGFJレポート 国際シンポジウム「エイズを考える:アフリカと日本の共通課題」(2013/6/1)
・UNHCRシンポジウムレポート アフリカの難民問題 人道支援の一層の強化を目指して(2013/5/1)
TICAD V 学生プロジェクト リリース関連まとめ