諸岡 若葉 さん

諸岡 若葉 さん

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お茶の水女子大学 生活科学部人間生活学科。「おすそわけ工房 kotocoto*」主宰、「田畑と森と海でつながる学生団体~いろり~」第1期メンバー

■ 諸岡若葉さんのこれまでの主な活動

○ プロジェクト主宰
2013年5月 「おすそわけ工房 kotocoto*」立ち上げ、主宰
・「Kotocoto*の食卓 vol.1」2013/6/5開催
・おすそわけイベントvol.1**山武で「おいしい」幸せを** 2013/6/16開催

○ インターン/プロジェクトメンバー参加
2013/4~「やお九州」第1期インターン生
2012/9~「田畑と森と海でつながる学生団体~いろり~」第1期メンバー
2012/8~「わかもの農援隊東京チーム」メンバー

○ イベント登壇
2013/2/16 「聞き書き」を通じて「地域」を知ろう!〜大学生が語る、地域の暮らし!~学生スピーカー

■ 諸岡 若葉さん インタビュー

【1】「おすそわけ」という言葉が持つ無理のない感じが好き

今年5月から「おすそわけ工房 kotocoto*」という取り組みをスタートしました。「一人ひとりが見つけた、暮らしのなかのコト。そんな一人ひとりの大切なコトのおすそわけをコーディネートしよう」と始めたものですが、明確な目的を掲げた学生団体とかではなくて、日常生活の何気ない魅力をみんなで共有できたら素敵だなあという、これまで感じてきた私のごく自然体の想いを原点にした、とってもゆるい感じの活動です(笑)

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「おすそわけ」という言葉は、とても好きな言葉です。「たくさん作ったから少しあげるね」といったちょっとした気軽さ。プレゼントのようなあらたまった特別感はないけど、だからこそ人の心遣いや和みたいなものが感じられます。とっても日本らしいですよね。

私は「無理に背伸びする感じ」が苦手で。高い志を掲げるとか、理論的な背景を作るとか、行動に制約を入れるのがあまり得意じゃないんです。だから「おすそわけ」という言葉の持つ、自分に無理していない感じが好き。あげる側もらう側それぞれが何気ない部分で通じ合う関係が良いなって思うんです。

もちろんおすそわけするのは、モノだけではなくて、ちょっとした体験だったり気づきだったり何でも構いません。そんな感覚をおすそわけできる関係が広がっていたら素敵ですよね。

それが「kotocoto*」という言葉にも反映されています。例えば音としての「コト」。料理をしている包丁の音、家のきしむ音、日常のありふれたシーンでの何気ない響き。そしてカタチにない「事」、大切なこと、みんなで共有したいこと。ワクワクやときめきやそんな「コト」。さらにはそれぞれの「個と個と」の繋がりや個性や・・・

そんなカタチあるもの無いものとりまぜたさまざまな「コトコト」を紡ぎ合う「工房」を私は作ってみたいと考えました。一人ひとりがみつけた暮らしの中の「わくわく」を詰めたお弁当。「kotocoto*」は、それらをみんなで持ち寄って、おすそわけする空間なのです。

【2】母親の感性と中高一貫6年間の学生生活が今の活動の原点

このような活動をしてみたいと考えるようになった、私の想いの原点は大きく二つあります。その一つは母の存在です。

母は、特段料理に凝るタイプでも、栄養や食材にこだわるタイプでもないのですが、とても自然な感じで食事の時間を「ワクワク」で彩るセンスに長けた人でした。仮に食事がファーストフード店で買ってきたハンバーガーだったとしても、可愛い小皿に移し、季節や行事に合わせて作ったランチョンマットを敷いたり、たまにはお花を飾ったり、何かウキウキした空間に仕立て上げる。

それがごく当然に日常に組み込まれていました。気負わないからこそ自然に生活に溶け込んでいく魅力的な時間。こういった感覚は、幼少の時から私の価値観の中に刷り込まれていった気がします。

もう一つは、中高一貫の学生生活です。私の通っていた五ケ瀬中等教育学校は、宮崎県と熊本県の県境に近い、最寄の駅からもバスで1時間半ほどかかる山奥の町にありました。一学年は1クラスだけの全寮制で、町の人口も数千人程度。人と人の距離がとても近い環境で6年間を過ごしました。

学校の周りには、コンビニやゲームセンターなんてありません。パソコンも携帯電話もないですし、テレビを見る習慣も無い閉ざされた空間で。だから遊びは自分で作るものでしたね。川遊びしたり缶蹴りしたり、もしくは地域の人と一緒に活動したり。まさに日本の原風景というか、日本人の原体験というか、平成の時代にありながら(笑)、「三丁目の夕日」のようなそんな毎日でした。

そういった24時間365日、同じ人たちとともに過ごす密度の濃い環境の中では、「みんなで共有する」という感覚が自然なことでした。行動を共にしたり、感じたことを伝えたり、みんなで分けあったり。

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その中でも「おすそわけ」という感覚を、強烈に胸に刻み込まれたのが、高校2年の夏の出来事でした。その時学校の課題で、地元の人に話を聞きに行くことがあって、あるおばあちゃんを訪ねたのですが、畑で何か話をしていたら突然家に強引に連れられて行って(笑)。持っていたリュックに、おいなりさんやキュウリを詰め込んでいくんです。

「お土産に持っていけ」ということなんですが、方言がきつい地域なので、その時は話している内容もよく分からなくて(苦笑)。でも素直にいただいて、それをおばあちゃんに教えてもらったお寺の境内で一人で食べました。あっという間のあっけにとられた出来事なんですが、なにかしみじみ「こういうのっていいな」って思ったんです。

【3】心が動いた瞬間を共有する場を作りたい

高校時代は大きな使命感みたいなものに目覚めた時期もありました。国際協力とかそういう社会性の高い内容に魅かれてイベントに関わったりも。

でも「ちょっと違うな」と思うようになりました。そういう大きなテーマって、日常の私とは縁遠い世界のこと。「今の自分に実感できない、想像できないことって伝えられないよね」って感じたんです。「だったらもっと等身大の日常を大事にしたい」と。

「社会を変える」というと何か特別な凄いことのようですが、その「社会」自体は、人々のごく自然なありふれた日常の積み重ねでしかありません。ですから一部の志高い人だけで社会は作られているわけではなくて。

あらゆる人が、日々色々なことを考え、何かに気づき、そして行動に移している。そういう一人ひとりの想いをもっと大切に、そしてその価値を再認識する場を作りたいと思ったのです。

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そしてその形は、学生団体というあらたまったものではなく、先ほどもお話ししたような緩やかな繋がりでいいと考えました。私が通うお茶の水女子大学の学生は、インカレ団体などに積極的に出ていくことは少なくて学内で活動している子が殆どです。以前のこのインタビューに出ていた春花ちゃん(※記事はこちら)みたいにアクティブな子はかなり稀で(笑)。彼女は本当にバイタリティあって、チャーミングで素敵ですよね。

でも日頃友達と話をしていると、「学生団体の説明会に行ってみたんだけどとてもついていけなかった」という話のほうが多いんです。だからといって、そういう子が何も魅力や可能性を持っていないのかといったらそんなわけは無くて。お茶の水女子に来ているくらいですから、向学心も努力し成し遂げる力も十分あります。

あるとき何気ない会話のなかで、特に普段から積極的なタイプではない女の子が「初めて美術館へ行ってきたんだけど面白かった」って、その様子とか感じたことを報告してくれたときがありました。それがとても嬉しくて。こういうシェアっていいなあって思ったんです。ちょっとしたアクション、心が動いた瞬間を共有する楽しさ、そしてそういう瞬間を大切に感じられるためのお手伝いをすること、私はこういうことがしたい、するべきだって。

そしてみんながその瞬間を、感じただけで終わりではなくて「人に伝える」ことで膨らむものがたくさんあると。ですからその機会としてのイベントを定期的に作っていこうと考えました。しかしそれも何百人も集めるような大きなものではなくて、感覚が共有しあえる人たち少数のイベントを繰り返して、少しずつ共感者を増やしていければと。そしてみんなが気負わず気軽に参加できる場にしたいと思っているんです。

【4】「好き」の部分と、学問的要素を上手に組み合わせられるように

「おすそわけ工房 kotocoto*」の本格的な第一歩のイベント、『おすそわけイベントvol.1**山武で「おいしい」幸せを**』を、この週末6/16に開催しました。場所は千葉県山武郡。こちらの地元のみなさんと一緒に農作業をしたり、「食」を通して交流したり、田舎での「ほっこり」とした時間を楽しむ機会として企画したものです。

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当日はあいにくの雨で、朝を迎えました。そして主催者としてありえない寝坊・遅刻・・・。でも集合場所に到着したときに迎えてくれたのは、初対面なのに既に打ち解けて和気あいあいとした雰囲気と、参加している皆さんからの「20歳おめでとう!」のお祝いの言葉でした。

この日は、kotocoto*の初めてのイベントであって、実は私の20歳の誕生日でもあったのです。自分の不甲斐なさ、責任感のない大失敗に泣きそうな思いでしたが、そんな私を参加者のみんなは「漫画の主人公みたいだね!」と笑い飛ばしてくれました。

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会場である「食と農の体験工房 よもぎかん」到着後は、次第に天気も回復し、予定通りチーズケーキづくり、トウモロコシの収穫や落花生の種まきなどの農作業体験を行いました。

参加者は、東京・千葉からの学生の他、地元の皆さん、そして福島から来てくださった福島笑友会というコミュニティの方々など、総勢はなんと40名ほどに!ランチ交流会では、被災地から山武に移り住んで畜産農家を営んでおられる小林さんの育てたとろけるような牛肉、山武のおばあちゃんたちお手製の郷土料理や私たちがつくったチーズケーキなど、たくさんの美味しいごはんを囲んで、“個と個と”がつながる、わいわいガヤガヤ、とても幸せな時間でした。

初めてkotocoto*として地元の方々と協力しながら企画したイベントに、とてもたくさんの方が協力していただき、歓迎してもいただいて、本当に感謝ばかりです。そしてこれからの活動の可能性を感じ、一人じゃないという安心と、新たなワクワクがうまれました。

またこれからも「kotocoto*」では、みなさんへのおすそわけとして定期的にイベントを行っていく予定ですので、ご興味ある方は是非お気軽に私に声をかけてみてくださいね。

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そして、こういったみなさんのご協力や共感に応えるべく、私自身の企画力や発信力も鍛えていかなければと感じているところです。「若葉ちゃんのやっていること面白そうだね」って声をかけていただくことは増えているものの、その取り組みの意味とか私が感じていることを話した時、「あまり伝わらなかったかな」と思うこともあって。それはこれからの課題です。

でも今までにも話したように、大上段にコンセプトを掲げたり、キャッチーな言葉を使うのは私らしくないですし、そこから共感の輪を広げるためには、私自身の頭の中をまず整理していかないと。その点で、いま大学で学んでいる文化人類学はとても興味がある分野で、「好き」という直観的で主観的な部分と、学問としての俯瞰的で客観的部分を上手に組み合わせて、ストーリーを作っていけたらなと思っています。

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社会は時代とともに大きく変わっています。それは分かりやすく目に見えるものであったり、価値観など目に見えない変化だったり、でも普遍的な変わらない部分もたくさん残っていたり。そういう違いや背景や、その中で軸になるもの重要なことは何かなどと考えるのが私は好きです。

人生も、年齢や環境によってさまざまに思考は変化し、でも根底では変わらないものが多かったりします。私の中の価値観の軸にある「無理をしない」「自然体」という表現は、そういった中で「自分にとって大切なものは何か」を探し出して、それを大切にする生き方のこと。まだまだ私の中の感覚を上手に言語化できないのはもどかしいのですが、それを少しずつ具体的な形で体現しながら、みんなの日々の何気ない心の動きの瞬間をおすそわけし、それぞれの新たな可能性や大事な価値観を膨らますことができる空間を作っていければいいなと考えています。