井上 裕美 さん

井上 裕美 さん

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慶應義塾大学看護医療学部。慶應義塾大学の医薬看3学部合同の団体「学生団体CISCA」3代目代表

■ 井上裕美さんのこれまでの主な活動

○ 学内
・福澤諭吉記念文明塾第9期
・2013年8月はアメリカのミネソタ州にある「Mayo Clinic」において2週間の看護実習を予定。

○ 学外
・2011年4月より、慶應義塾大学の医薬看3学部合同の団体「学生団体CISCA」に参画。2012年9月より3代目代表。団体のマネジメントと共に他団体のイベントへの出演活動なども行っている。
-2012年12月 MediCafeオープン記念イベント トークゲスト
-2013年 2月 女子大生リボンムーブメント主催「横浜が、神奈川が、日本の子宮頸がん予防を変える 私たちが考え行動します ~みんなで守る 未来のあなた~」  学生登壇者
・2013年8月予定の医療系アプリ開発コンテストAppliCare実行委員会に参画。営業局として活動。
・2013年2月より、学生の活動をもっと世に広めたいという想いのもと発足した「Team Viseos」に参画。2014年春に学生団体EXPOの開催を目標に、メディアグループにて学生団体の活動にスポットを当てたフリーペーパーの制作を行う。

○ その他
2012年8月オーストラリア ゴールドコーストにて1ヶ月間、現地家庭にホームステイしながらクルーズ船にてインターンシップを経験。

■ 井上裕美さんインタビュー
【1】「両立できている気がしていた」ことを思い切って白紙に

私はもともと体育会系の人間で、高校の頃はずっとバドミントンをしていました。大学に入ってからも「やるなら本気で」と思い、体育会系のバドミントン部を選んだくらいです。カリキュラムが厳しい看護学部で体育系に所属している人はけっこう珍しくて、でも「頑張れば思ったより両立できるものだな」と日々のハードな生活に、ちょっと自信を持ったりもしていました。

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しかし1年くらいたった頃、「両立できていると自分では思っていたけど、それって結局どっちも中途半端なだけだよね」と、ふと自分を客観視するときがありました。バドミントンの選手としてプロになれそうな感じでもないし、看護師をめざす意欲もほどほどのところでしかない。「これは生き方に誠実さが足りないな」と自分を不甲斐なく感じるようになったんです。

そこで思い切って、部活を辞めてみることにしました。高校の時から明け暮れていたバドミントンをしなくなったら自分には何が見えてくるのか。それはかなり勇気が必要でもあったのですが、あえてその先のビジョンも予定も立てず、その時はまずは「辞めること」から始めてみようと思ったのです。

そのすぐ後くらいでしょうか。一通のメルマガが目に留まりました。慶應義塾大学の医療系学部の学生が集まってできた学生団体のイベント案内でした。この団体「CISCA」は、ちょうどその一年前にできたばかりの新しい組織なんですが、すでにかなり実績を持っていて、でも授業とバドミントンに目いっぱいになっていた私にとってはまだ未知の世界だったんです。

顔を出してみて、私が興味を感じたのは内容以上に「人」でした。この点は以前にこの彩才兼備のインタビューに出ていた藤田優美子さんと被っちゃうんですけど(笑)、当時の幹部だった医学部の田沢さんをはじめとする1期生の魅力は絶大でした。彼らの話を聞いて「私は医療の世界に真面目に向き合っていなかったな」と恥じ入るとともに、「私にももっといろいろなことができるかもしれない」そんな可能性を感じたんです。

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CISCA(医薬看3学部合同学生団体)」は「医療系学生に新しい価値観を」という理念で運営されている団体です。慶應義塾大学には、医療に関わる三学部(医学部・薬学部・看護医療学部)が揃っているものの、拠点とするキャンパスが違い、なかなか出会う機会がありません。学部の枠を超え集まり交流することで、新しい価値観に出会い、それぞれの可能性を高めていくのが狙いです。

活動は大きく分けて、ボランティア活動と講演やグループワークなどの勉強会があります。ボランティアは慶應病院の小児科のボランティアなどを定期的に行っており、勉強会は半年に一度の100人規模の講演会をはじめ、都度テーマを決めてさまざまな企画を開催しています。

【2】看護学部の学生が代表をする意味

まさか自分が3期の代表になるとは夢にも思ってもいませんでした。それまで2期いずれも医学部の男性が代表だったので、何となくそういう流れだろうと。そうしたらある時、二期の幹部メンバーから呼ばれ「次の代表をやれ」と。まさに有無を言わさず的な指令をもらったんです(笑)

当然驚いたんですが、でもすぐに「やろう!」と思いました。「井上は物事に動じないから」とか、褒め言葉なのかどうか分からないような推薦理由だったりもしたのですが(苦笑)、二期の幹部みんなが私を選んでくれたということは素直に嬉しかったですし、もう一方で「私は代表とは無縁だ」と無意識に感じていたこと自体が、あらためるべき医療の世界の課題だとも感じたからです。

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まだまだ断片的にしか知らないとはいえ、医療の世界は旧態然とした部分で占められていることはよく感じます。昨今は「チーム医療」という言葉が叫ばれるようになっていますが、実際の病院においては、お医者さんは「先生」で、看護師や薬剤師は先生に付随するポジションになっています。

でも看護の勉強をし、そして同じ志を持つ仲間と話をしていると、「看護師だからこそ」の魅力がとても多いことに気付かされるんです。何といっても患者さんと接する時間が長いですから、より患者さんの視点に近くになりますし、それによって得られる現場の知識や感覚も独自のものが増えていきます。

さらに終末期実習などもあるため、絶えず「生と死」というものに直面しています。それぞれが独自の「死生観」を持ち、お互いに真剣に語り合う。自分たちがしている仕事の価値をいつも考え、そこにプライドと優しさを合わせ持って、患者さんに接しようとする。そういった本気で看護を目指す周りの友人の意識を垣間見ると、「みんな素敵だな」と心から尊敬しますし、そういう魅力的な人たちに囲まれて過ごせることをとても感謝しています。

そしてそれは、もっと学部を超えて知ってほしいことでもあります。だからこそ、この「CISCA」で3学部の学生が交流することに意味があると思っているんです。学生時代にそれぞれの立場の特性や魅力を知り、お互いに敬意を持ち、理解しあえたうえで実際の医療の現場に出てもらうこと。これは医療業界にとっても、患者さん、つまりは社会のすべての人においてもとても意味があるはずです。まさに「看護学部生であり、女性である私」が代表をする理由はここにあると思いますし、それを理解し任せてくれた先輩方の度量や見識の高さも、とても素晴らしいものだと感じています。

そのため私は、「まずは仲良くなること」「楽しむこと」を最大のミッションに掲げました。医療の団体なので、どうしてもアカデミックに寄ったり、堅苦しくなったりしがちなんですが、大事なのはお互いを知ることだと。みんなが気軽に本音で語り合えるような、そんな団体を作ることを意識してきました。

【3】私の身近な大切な人を大切にできる人間になること

東京大学の藤田優美子さんには以前からお世話になっていて、この彩才兼備のインタビューを読んであらためて「すごいなあ」「素敵だなあ」と思っていました。でも自分とは関係ない世界の出来事だと思っていたら、こちらもある日突然推薦いただいて(笑)

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ただ私は「等身大の自分であることを大事にしたい」という気持ちがずっと強かったんです。「表に出ること=名を馳せること」という意識に違和感があり、自分向きじゃないなって。それに「今までのみんなとの関係がぎくしゃくしかねない」というイメージも強かったんですよね。でも田沢さんとか周りの仲間に相談したら即座に「出ろ!」と(笑)

その時思ったんです。自分が表に出ることって、みんなが喜んでくれることでもあるんだって。確かに藤田さんの記事も、みんなとても楽しそうに見て盛り上がっていたし、「敢えて自分を盛るんじゃなくて、等身大でいいんだ」と思えたとき、肩の荷が下りて素直に前向きにとらえることができました。そしてそれが、周りの大切な人たちへの恩返しに繋がることだと気付いたんです。

そう考えたら、逆に開き直っちゃったほうが良いかなと(笑)変に普通然としてるより「お前何考えてるんだ!」「調子に乗ってるなあ」って突っ込まれるくらいの写真の方が、みんなが喜んでくれるかなって。そうやって少し意識を変えることで私自身も、今まで自分でも気づいていなかった何かを発見できるかもしれないという期待が出てきたりして。・・・でも大丈夫ですかね?本当に白い目で見られるだけで終わりだったらどうしよう(苦笑)

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大学生活もあと残り1年を切りました。せっかくなので、その時間は精いっぱい有効に使いたいと思っています。まずは「CISCA」のあと半年の代表任期の間に、何ができるかどうか。私は次の世代のみんなへは「好きにやっていいよ」「つぶしても構わないし」というくらい、私が私の信念でやっていたように、次の幹部も自分たちらしくあってくれればいいと考えています。でも私が大事にしてきた「仲が良い組織であること」「自らがまず楽しいこと」は意識してほしいなという気持ちもあります。このあたりはまだ私自身も整理できていません。

「CISCA」以外に関しては、例えば「Team Viseos」に今年2月から参加し、来春の学生団体EXPOの開催に向けたフリーペーパーの制作を手掛けることになりました。また今年8月予定の医療系アプリ開発コンテスト「AppliCare」実行委員会にも入り、同じ8月には、アメリカのミネソタ州にある「Mayo Clinic」において2週間の看護実習も予定しています。福澤諭吉記念文明塾第9期にも、この4月から参加しています。

このようないま行っている活動は、今は点でも、いつかどこかで繋がっていくんじゃないかなと期待しています。また、色んな分野を学ぶことで、たくさんの人をより深く理解することに繋がるはずですし、これからも視野を広く持つことは大事にしていきたいです。

でもやはり、いつも大事にしていたいのは「私の身近な大切な人を大切にできる人間になること」という私の原点の部分。忙しくなって精神的に追い込まれたり、なかなか思い通りにいかないようなときでも、この気持ちは忘れないように。もちろん大学を卒業して社会に出ても、いつまでもそういう人間でいられるように、自分にプレッシャーをかけ続けていこうと思っています。