西村 有未 さん

西村 有未 さん

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東京大学医学部。医師のワークライフバランスに関する活動を主催、「Medical Future Fes」企画代表、ジャパンハートの学生企画チーム

■ 西村有未さんのこれまでの主な活動

○ 医師のワークライフバランスに関する主催活動
~ イベント主催 ~
2013/06/23 育児と仕事の両立ーそのために今できることは何だろう?
2013/02/16 医師のWork Life Balanceについて考えよう
2013/08/31 「Medical Future Fes ~この夏、1000人の医療系学生が東京に集結!~」(企画代表)
2013/09/19 「オーケストラMOTIFチャリティーコンサート」 (NPO法人ジャパンハート共催)

○その他
・ジャパンハートの学生企画チームとして参加。「ミャンマーで病に苦しむ一人の少女の『心』を救う!」のクラウドファンディングプロジェクト(READY FOR?) 他。
第26回東アジア医学生会議(EAMSC2013)運営
東大医学部五月祭講演会企画『2048年の医療』代表
・東大女性だけのサークル「UT Girls – Link」に参加し、受験生への応援活動などを行う

■ 西村有未さんインタビュー

【1】もっとも人の役に立てそうな仕事、それが医学の道だった

私は子供の頃から「人が喜ぶことをしたい」という想いがとても強かった気がします。いつも物事を深刻に考えがちで、そのため自分自身を認めることがとても苦手で。だから「自分を認められる自分になるには、人の役に立ってみんなに喜んでもらえる仕事ができる人間にならないと」ってずっと考えていたからです。

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進路はかなり以前から「理系」に決めていて、その中でも当初は化粧品開発に興味がありました。「人の役に立って形に残るものだから」というのがその理由です。しかし人と接することが好きだったので、だんだんと他者の人生に関わることができる医者の道もいいなあって。それが高2の冬の頃です。

ただその時点ではしっかり決めきれず、どちらの選択肢も残る理Ⅲを受験することに。もっとも、当時塾でアドバイスいただいていた理Ⅲの先輩の女性が、とても魅力的だったことも、実はけっこう影響していたりするのですが(笑)

入学してからは、医学の道を進むことに迷いはなくなりました。でも「だからこそ今のうちは医学以外の世界を見てみたい」「もっと知らない世界を知っておかなくては」と考えました。

そこで全学部の学生が集まる、スポーツ系のサークルに入りました。ここでの経験はとても面白かったです。いろいろな学部から集まっていて、それぞれにみんな個性が強くて。私が早くから理系進学を決めていたせいもあり、文系の子たちとのギャップが新鮮で。読んでいる本も話題も全く違うし、それがとても興味深いんです。

一方で、医学部生にはあまり縁がない「就活」のことについても考えさせられました。就活をしないことで、自己分析や自分の将来を見つめなおす機会が少なくなるのではないかと。

ただまだ1-2年の頃は、普通の女子大生として過ごしたいという想いが強く、「理Ⅲであること」は隠しがちで。女子会をしたり、ファッション誌のリポーターをしたり、化粧品メーカーのプロジェクトに関わったり、そんな女子大生らしい生活を楽しんでいました。

医学生としては、回り道な時間を過ごしてきたのかもしれませんが、これらの経験は、医療という枠に捕われない、広い視野を得る機会になったのではないかと思います。

【2】「西村さんならできるから」ってそそのかされて

医療の仕事は一生かけて取り組むものだと思っています。だからこそ、家庭や育児や自分のプライベートの部分とどう向き合って働くかは、私たちにとって大事なことです。しかし入学してからずっと聞かされてきた「女性は大変だよ」という言葉に現在の課題が表れています。医療の業界では、ブランクを作るということがキャリア形成において大きなネックになりがちだからです。

医療の進化は日々目覚ましく、最前線の現場から長く離れるのは不安です。また医師の代わりはアルバイトや派遣では補えません。どの現場も人手に余裕はなく「育休の時だけ誰かが代わりに」はとても非現実的なこと。考えなくてはいけないこと、クリアすべきことが山積みなんです。

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そんな想いをある日、女性のキャリアを語りあう場でぶつけてみたんです。そうしたらみなさんにとても共感していただき、多くのアドバイスもいただいて。そして産婦人科医の吉田穂波先生をご紹介いただきました。

彼女はハーバード大学への留学経験もあり、医師として活躍しながら4名のお子さんを育てていらっしゃいます。そして何よりも人柄が本当に魅力的。こういった素敵な女性に出会い、「もっとみんなにも知ってもらう場があったら」と感じたのです。「目標になる方になかなか出会えないから、自分の将来の可能性をイメージできないのではないか」と。するとみんなから「西村さんならできるから」「自分でやってみたら」ってそそのかされて(笑)

そこで私の想いを整理し、Facebookやtwitterなどで発信してみたんです。とても真面目に熱く(笑)。そうしたらとても多くの共感の言葉をいただくことができ「じゃあやってみよう」と。

【3】「全国の医学生が”医師のワークライフバランス”を考える」プラットフォームを作る

その活動名称は「WLB for JOY」と名付けました。WLBとは、ワークライフバランスのこと。そしてJOYは女医にかけています。しかし学生団体という形は考えていませんでした。学生とか社会人(医師)とか関係なく、課題や想いを共有する人たち誰もが気軽に集まり、繋がりやすい形にしたかったからです。

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最初のイベントで掲げたのはこんなテーマです。~『医師として仕事も続けながら、幸せな家庭も築きたい!』それって難しいのでしょうか?様々な悩みを乗り越えてきた男女の先輩医師の経験をヒントに自分の将来について、真剣に考えてみませんか?~

先ほどご紹介した吉田先生をはじめ、多くの先生方にご協力いただきましたが、女性医師だけでなく、子育てに頑張るパパなど3名の男性医師(トータルで6名)にも加わっていただいたのがこだわったポイントです。ワークライフバランスの問題は、女性だけの問題ではなく、男女一緒に考えていくべき問題だと思っているからです。

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この開催では100名もの医学生にご参加いただきました。それも全国から。さらにその活動がメディアに紹介されたり、新たな出会いがたくさん生まれたり、次回以降に向けて可能性が大きく広がっていくのを感じました。

その後6月23日にも第二回目のイベントを開催し、私たちのするべきこと、持っている可能性などが、少しずつ見え始めてきました。

これから私が目指すのは、活動を全国に広げていくことです。このテーマは東京の一部の学生だけで終わっていい問題ではないはずですから。実際に全国から多くの反響やメッセージをいただいたりしますし、そういった方たちが、地元でその想いを投げかけ、みんなで考える場所が作れるようにしたい。

私たちはこれまでの活動を通じて、ワークライフバランスを考えるためのさまざまなデータを集めています。そして活動に好意的なたくさんの協力者の方に出会ってきました。このように積み重ねたものを全国の医学生が活用できるプラットフォームにしていけるのではないかと考えているのです。そしてお互いのフィードバックを通じて、より高い相乗を生み出す。そんなカタチを作りたいんです。目指すべきは「話し合うこと」ではなくて「変えること」「より良い形を作ること」。だからこそより多くの人、組織、企業の方と良い関係を構築し、裾野を広げることを大事にしています。

【4】医療を通じて何が実現できるか。その可能性を広げるために

みなさんは「ジャパンハート」というを団体をご存知でしょうか。ミャンマーやカンボジアといった、「貧しさゆえに医療を受けられない」途上国の人々に医療機会を提供したり、被災地やへき地など医療の恩恵を受けられない地域に医師を派遣したりする、“日本発の世界医療団”を目指して活動するNPO法人です。

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私はこの代表で、17年間無償無給で医療活動を続けている吉岡秀人さんの著書を読み、その考えや熱意にとても感銘を受けました。そしてもっと彼の哲学を知りたい、何らかの形でお手伝いしたいと思うようになり、この団体の学生チームに入り広報的な役割をさせていただいています。

ジャパンハートクラウドファンディング

その活動の中では、「READY FOR?」というクラウドファンディングサイトを活用し、「ミャンマーで病に苦しむ一人の少女の『心』を救う!」プロジェクトを立ち上げました。このときは604名の支援者から300万円以上を集め、ニーニーミンルィンちゃんのを手術を日本で行うことに成功しています。

また、去年の夏は実際にミャンマーに赴き、診療所や人身売買・HIVからこども達を守るための養育施設Dream Trainでお手伝いをさせていただきました。初めて見た途上国の現場に医療のあるべき姿を考えさせられるとともに、医療ができない医学生の立場からではありますが、このこども達のために何かできることをしたいと強く感じました。

そして「もっと多くの人が、自分の好きな事や得意な事を通して社会貢献ができるようになったらいい」。そうミャンマーで感じた私たちは、この秋に音楽で人の心を震わせたいと考える「オーケストラMOTIF」とともに、チャリティコンサートを開きます。

チラシ表

「ミャンマーの養育施設Dream Trainのこども達の生活に、彩りを与えたい」という、この地でみんなと過ごして感じた想いを実現させるべく、このコンサートからあがる収益でこども達に音楽教育を行おうと考えています。9月19日に開催を予定していますので、ぜひ皆さんも足を運んでいただけると嬉しいです。

そしてもう一点、私が携わっているのが、「Medical Future Fes 2013」という学生イベントです。このインタビュー(彩才兼備)でも、既に薬学部や看護学部でアクティブに活動をしている素敵な女性が登場していますが、今医療系学生はかなり熱いんです。

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これからの社会の将来を見据え、高い視点と大きな志で貪欲に活動している、そんな学生がとても多いように思います。そういった医療系学生が全国から集まって、「医療・ヘルスケア業界を始めとした各界のトップイノベーターと、10年後の世界で活躍する医療人材になるために必要なことはなにかを考えよう!」というのがこのイベントの基本的な趣旨です。

私は企画代表という形で、プロジェクトの骨格づくりや全体の取り纏めを行っています。全国から1000人の学生が集まり、議論し交流する。ここから新たに生まれるものは本当にたくさんあると思います。そういう機会に携わることで、私自身も皆さんから刺激を受け、自分自身が目指すものの可能性がより膨らんでいくのではないか、そんな期待を持って開催を楽しみに待っているんです。

メディアでの紹介リンク

・ドクタラーゼ これから、医学生に何ができるか? 医学生イベント「医師のWork Life Balanceについて考えよう」を振り返る ※かなり詳細に主催者/参加者の想いを紹介
・CBnews 医師が医学生に「自分の軸決めて」と助言- ワークライフバランスを考えるイベント (2013/02/18)
・CBnews 「日医・道永さんと女学生の座談会- 女性医師のキャリアパス、理想と現実」 (2012/11/29)