國村 有弓 さん

國村 有弓 さん

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国際基督教大学 教養学部 理学科を経て、日本医科大学大学院 医学研究科 解剖学・神経生物学分野 博士後期課程

■ 國村有弓さんのこれまでの主な活動

〇学内/研究など
2011年3月 国際基督教大学 教養学部 理学科卒業
2013年3月 国際基督教大学大学院 アーツ・サイエンス研究科 理学専攻 生命科学専修 博士前期課程 修了
2013年4月 日本医科大学大学院 医学研究科 解剖学・神経生物学分野 博士後期課程 入学
【研究テーマ】生殖制御システムとセロトニンニューロンの相互作用に関する機能形態学的研究

〇大学機関誌編集
国際基督教大学「今を輝く同窓生たち」の編集および運営 

〇学生団体活動
・国際基督教大学イベント企画サークル「uni:cu(ゆに~く)」第4代代表
卒業生・在校生含むICU生のつながりをつくり、ICU全体の活性化を目的に運営。「就活」がテーマの交流イベントの企画・運営や、ICU生の生の声を届ける」ことをテーマに、ICUの卒業生の方々の声を掲載した「就活冊子」の企画・編集などを手掛ける。

■ 國村有弓さんインタビュー

【1】「覚悟を決めるなら全力で応援するよ」の言葉に支えられ

この春から日本医科大学大学院の博士後期課程(博士課程)に入学しました。これでもう大学生活も7年目ですが、まだもう暫くは学生を続けることになります(笑)

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私が入学した国際基督教大学の理学科では、修士(博士前期課程)を目指す人は多く、半数ほどが進学したのではないかと思いますが、博士課程まで残ったのは私ともう一人くらい。全国的に見ても女性で博士号を目指すのはかなり限られているかと思います。

ただ私自身はかなり以前から、博士課程へ進むことは決めていました。研究するということが私の肌に合っているというか、卒業研究で初めて研究に携わって、実験で手を動かすことも面白いし、やっぱり知らないことを知るっていうのがすごく楽しかったんです。「この先ずっと実験をやりたいな」と卒業研究を始めた時に強く思いました。

そしてもう一点大きいのは、周りの教授、先生方、そして家族の理解とサポートです。同世代の殆どの人が就職して大学を離れ、また既に結婚や出産で会社を離れたりする人も少なくない中で、大学で研究を続けていくのはやはり異端な部分はあります。博士課程を終えるころにはもう30間近ですから、「女の子なのにそこまでするの?」みたいな視線もありますよね。

でも、先生方は「國村さんが真剣に取り組むっていうなら全力で支えるよ」って言ってくださいました。私は一人っ子で、かなりマイペースでわがままに生きてきましたから(笑)、そういう中で自分のやりたいことを続けることができているのは、学校での恵まれた環境や理解ある親に助けられている点が本当に大きいと思っています。

【2】子供の頃からの偏頭痛が医学研究を目指すきっかけに

所属する研究室の核となるテーマは「脳とホルモン」で、卒業研究の時からずっとこのテーマで研究をしています。

医学や生物学に興味を持った原点は、高校生の時の解剖に遡ります。当時私は親に我侭言ってカナダに3年間留学させてもらっていました。そこで行われた授業で生命の神秘に出会います。ラット、子豚、羊の脳、牛の眼などさまざまなものを解剖しましたが、例えばラット。外観からは想像がつかないほど体内の構造が美しいんです。精密機械のさらに上を行く巧緻な世界。無駄のない絶妙なバランスで臓器が配置され、生命をつかさどっていて。これは本当に感動でした。

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一方で私にとって幼いころからの悩みの種に、偏頭痛があります。子供の頃から今も変わらず頭がすっきりしていた日はほとんどないですね。薬を飲んでもそんなに効かないし、何が原因かもはっきり分かっていないようですし・・・。そんなことから、「脳」について関心を持つようになりました。

そこで高校卒業後は医学の道に進もうと、急遽高校目前に日本へ戻ることにしました。しかし単身留学者は医学部を帰国枠で受験することはできなかったため、大学に入って学士編入しようと考え、入学したのが国際基督教大学(ICU)です。ICUで勉強するうちに、「よく考えたら研究に興味はあるけど医者になりたいわけじゃないなあ」と。結果的に進路を変更することにしました。

その頃出会ったのが、今研究室でお世話になっている教授です。日本医科大学の教授なのですが、ICUに神経生物学を教えに来られていて。そこであらためて脳の面白さを教えていただきました。そして以前よりずっと脳に関係する研究をしたいと思うようになったのですが、ICUではそのような環境が無く、大学4年生頃から国内留学と言う形でICUに籍を置いたまま日本医科大学の研究室に通わせて頂くことになりました。

その後修士課程も同様、ICU大学院に進学しつつ日本医科大学で研究を続ける日々が続き、この春晴れて日本医科大学の博士課程に籍を置くことになったのです。

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多くの人にとって、博士課程に進む人との接点は少ないでしょうし、どんな日々を送っているのか想像がつきにくいのではないでしょうか。「研究室にこもって浮世離れした価値観で動いている人たち」そういうイメージも有るかもしれません。確かにそれはある意味正しくて、頑固に自分の道を進むあまり、社会で何が起きているか何が必要とされているか見えなくなってしまう場合も少なくありません。

でも実は皆さんの想像以上に、自分たちが手掛けている研究の社会価値や社会との接点はかなり意識しているんです。それがないとやっぱり好きだけでは長く続けられません。特に私たちの研究は基礎研究の部分ですから、お金はかかるし、だけど分かりやすくお金が儲かるものでもない。だから社会に必要とされることをしないと、研究を続けていくことさえ難しくなったりもします。ですから、そういった好きの部分と使命感、そして社会からの共感、これらの両立のバランスはこれからさらに重要性が高まって来るのではないかと思っています。

【3】博士課程では、価値ある成果にこだわりたい

私が博士課程への進学を選ぶ際、教授からあるメッセージをいただきました。それは「女性の生き方のロールモデルの一つになれるのではないか」と言うものです。

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ただこれは決して「女性研究者になる」と言う進路を見せるだけの端的なものではなく、もっと広い視点で「自分の好きなことに邁進していくことが成立する生き方」を見せるという意味でのロールモデルなのではないかと私は考えています。結婚や出産や育児など女性にとっての重要なライフステージも、日々のプライベートの充実も、「自分の好き(研究)の追求と両立し相乗させることができるということを社会に示してほしい」。それが「ロールモデルになって欲しい」という言葉を私に投げかけてくれた、教授からの期待なのではないかと思います。

生き方の方向性や多様性という点については、学部時代に何度か考える機会がありました。ひとつは「uni:cu(ゆに~く)」と言うサークルの代表をして、就活イベントや就活用の冊子を作ったこと、そしてその縁で大学の機関誌の「今を輝く同窓生たち」と言う連載をされている同窓生の方々と知り合い、編集を手伝わせていただいこと。

この二つの機会で、さまざまなICU出身の先輩とお会いし、(自分自身は当面就職する予定はなかったのですが)社会に出て働くということ、そしていろいろな人がいろいろな想いを持って人生を送っていること、その魅力や可能性を学ばせていただいたのは、今の研究の世界でも役に立っているのではないかと思います。そして「じゃあ今自分はどういう存在としてロールモデルになりえるのか」と。

実はサークルの代表をしたあと「自分はリーダーに向いていない」「与えられたことをこなす立場の方が自分に合ってる」と感じるようになり、自ら率先して動くといった行動スタイルは減りました。とはいっても静かにしているような性格でもなく(笑)、自分が我儘なのは知っていて、自我があるような無いようなそんな感じで淡々と過ごしてきた気がします。

でも今あらためて自分を振り返って見ると、少しはハングリー精神があるタイプかもしれません。以前ICUの科学哲学の授業中に先生から聞いた「もう一度自分に生まれ変わっても同じ生き方をしたいと思えるか」と言う言葉が非常に印象に残っています。ある日突然、今まで自分が生きてきた人生と全く同じものをもう一度やり直すことになっても後悔しないような生き方をしたいなと、それから思うようになりました。

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とにかく思いついたらやる。「今やったらきっと明日の自分は今日の私に感謝するだろう」と(笑)。やらないことで落ち着かなくて、楽しむことも楽しめないのが嫌で。やったことでどうなるかとかより、そっちの方が気になります。まあ、だからこそ我儘になっちゃうのかもしれませんが、周りのみんなは良く許容していただいているというか、そういう人ばかりの場所でしか過ごさないようにしているというか(笑)。私は本当に人付き合い苦手なタイプなんですが、周りの環境にはものすごく恵まれていると思います。

何かこうやって話しているうちに、やる気が膨らんできたかもしれませんね(笑)。ですから、今までお世話になってきているたくさんの方のためにも、これからの研究はしっかり社会に還元できるような価値あるものにすることを、ここで宣言したいと思います(笑)。期待してください。